
今回は生地選びで覚えておきたい、織物と比較した際の編み物の長所と短所です!
こんにちは。
アパレル業界6年目のTomoです。
今回は「絶対に覚えておきたい!【編み物の長所と短所】ということで書いていきます。
アパレルの企画、品質管理の基本となる知識なので是非押さえておきましょう!
長所
- ・身体によくフィットする
- ・ソフトでしなやか
- ・ドレープ性に富んでいる
- ・しわになりにくい
- ・着脱が容易
- ・通気性・保温性に富んでいる
- ・成形ができる=糸のロス率が小さい
※最近では編み物ライクな織物なども出てきています。また、使用している繊維や生地の構造、付帯加工などによっても異なるので、あくまでも一般的な特徴について述べています。
では、解説していきます!
身体によくフィットする・ソフトでしなやか
肌着やスポーツウェア、タイツ、靴下などには編み物が使われていることからも分かるように、織物に比べて編物は一般的に身体にフィットしやすいとされます。
織物はたての糸とよこの糸を交差させた構造になっています。したがって、多かれ少なかれ、糸が組み木のように直角に交差した部分がいくつもあるため、丈夫な反面編み物に比べるとフィット感が出にくくなります。
編み物は、ループの間に糸を通す作業を繰り返してつくられており、糸と糸の交差している箇所が曲線になっているため、直角に交差している織物よりも柔らかさがあります。
ドレープ性に富んでいる
ドレープ性とは、ざっくりいうと生地の「しなやかさ」を表す言葉です。
高級なドレスやスカートのように優美な波打ちができるような生地の性質をドレープ性といいます。
これも、上述のように編み物と織物の組織の違いから来ています。
しわになりにくい
しわというのは、変形した状態から完全に回復できないために生じます。
つまり、1)そもそも変形しにくい 2)回復しやすい 繊維、糸、組織の生地はしわになりにくいといえます。
編み物は組織がゆるやかで、糸および繊維が移動しやすいため織物よりも回復しやすいといえます。
着脱が容易
これは上記のように組織がゆるやかで糸が動きやすいためです。
かぶり(プルオーバー)の服で織物が少ないのは、糸が移動しづらく、身体に合わせて変形しにくいからです。
たまに織物のTシャツやピステなどがありますが、首周りや脇にファスナーがついていたり、袖から脇のラインのシルエットに余裕があるデザインになっていたり、襟ぐりにだけ編み物を使っていたりと仕様を工夫しているケースが多いです。
通気性・保温性に富んでいる
「風を通すのに温かいってどういうこと?」と一瞬矛盾していそうに思えますが、こちらにもきちんと理由があります。
まず、通気性が良いというのは先ほどから書いているように、組織がゆるやかで密になっていないためです。
そして、ゆるやかに糸同士が組み合わさっているため、織物に比べてかさ高になります。
その結果、空気を多く含むことができるため保温性が高くなります。
ただし、通気性も良いので、冬にミドラーとしてニットのセーターやベストなどで身体の熱をなるべく逃がさないようにして、上には風を通さないような織物のジャケットやコートを羽織るのは理にかなっているのです。
成形ができる=糸のロス率が小さい
生地は基本的には長方形のシート状につくられます。
その上に型紙を置いて(実際に型紙を置いて裁断することは減ってきていますが)、袖や身ごろなどのパーツを切り出します。
極力、ムダが出ないように、パーツの取り方を考えるのですが、それでもどこのパーツにも使えない切れ端は発生します。
このようにして、基本的にアパレル製品を作る際には糸(生地)にロスが生じます。
しかし、編み物は、製品の形で編み上げる「成形」という製法をとることができます。
完全に製品の形にする「ホールガーメント」や、パーツの形に編み上げて、それらを編んでつなげる(リンキングという)ことで製品をつくることができるため、織物に比べると糸のロス率を小さくすることができます。
短所
- ・型崩れしやすい
- ・ラダリング(伝線)しやすい
- ・スナッグ(ひきつれ)しやすい
- ・ピル(毛玉)が起きやすい
- ・仕上げ加工、裁断、縫製がしにくい
- ・単位面積当たりの重さが重い
※短所の説明では、「スナッグ」「撚り」「パッカリング」などの用語が出てきます。事前に用語について知っておきたい方は、以下の記事がおススメです。
型崩れしやすい
長所として「組織がゆるやかで、糸が動きやすい」ため身体にフィットしやすい、しわになりにくい、といった特徴をあげました。
反面、糸が動いてしまうということは型崩れしやすいということになります。
セーターを洗濯してハンガー吊りで干すと、水の重さで肩が落ちてしまったり、ハンガーの形に肩が出てしまったりすることからもわかると思います。
ラダリング(伝線)しやすい
織物は複数のたて糸とよこ糸が交差してできています。一方編み物は1本の糸からできています。
そのため、編み物はどこか1か所から糸が引き出されてしまうと、そこからほころびが広がってしまいやすい構造といえます。
同世代かつ男性しかわからないと思いますが、「浦安鉄筋家族」で主人公の姉の彼氏である花丸木くんが手編みのセーターの袖から出ていた端の糸をパスタと一緒に食べてしまい、気づいたら上半身裸になっていた話がありました笑
極端な例ですが、たくさんの糸からできているようで編み物は1本の糸からできているために、ほころびやすいということがわかります。
スナッグ(ひきつれ)しやすい
スナッグとは、糸または繊維が引っぱり出されて、生地の表面でループ状になったり、引きつれしてしまったりする現象です。
(ジャージなどの表面で糸が小さく輪っか状になってピュっと飛び出しているあれです。)
これも糸が動きやすく、表面に引っぱり出されやすいために起きやすくなっています。
ピル(毛玉)が起きやすい
毛玉は、生地が摩擦などによって毛羽立ち、その毛羽が絡み合うことによって発生します。
編み物は織物に比べて構造が粗いため、毛羽立ちやすくなります。
また、風合いをやわらかくするために撚り(より)の甘い糸が使われる傾向があります。
撚りの甘い糸も毛羽立ちやすいため、毛玉が生じやすくなります。
仕上げ加工、裁断、縫製がしにくい
これも、糸が動きやすく、形状が安定しないことが原因で生じます。
ちょっと生地が引っ張られた状態で裁断してしまえば、本来とは異なるサイズ・形のパーツになってしまいますし、引っ張った状態で縫ってしまうと、寸法が変わってしまったり、パッカリングが生じたりします。
単位面積当たりの重さが重い
意外な感じがしますが、単位面積あたりでは一般的に織物よりも編み物のほうが重くなります。
本来織物でつくるジャケットなどのアイテムを編み物で企画することがありますが、織物でできたものよりも重く仕上がってしまうので注意が必要です。
最後に
いかがでしたでしょうか。
今回は編み物のメリット、デメリットについて書いてきました。
最後まで読んでいただいてわかったと思いますが、構造のゆるやかさ、糸の動きやすさによって「フィット感がある」、「しわになりにくい」などの長所が生じる一方で、それによって、「型崩れしやすい」「スナッグしやすい」といった短所が生じてしまいます。
何にでも短所はあると思いますので、短所があるから使わないではなく、短所をきちんと理解した上で、繊維や糸選び、仕様、加工などでカバーする、正しい取り扱い表示を設定する、といったことが求められると思います。
さらに深い知識を身に着けたい方は、TES(繊維製品品質管理士)の取得を検討するのもいいかもしれません。
では、今回はこの辺で失礼します。
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